続々・想い秘かに
「イルカ先生、一緒に映画でもどうですか?」
カカシはいつものように、食料を携えてイルカの元を訪れ、晩御飯をご馳走になってい
た。そして食べ終わった頃を見計らって、思い切って切り出したのだった。
「映画…ですか」
イルカの顔が急に不機嫌に曇る。これはヤバイと思いカカシはさっとチケットを差し出した。
「あの、これ前売り券なんですけど、折角2枚あるんで、どうかなと」
それを見るなり、イルカの顔が綻ぶ。カカシはほっとした。
カカシは、今日こそはと胸に決め、2枚の映画のチケットを手にイルカの元を訪れた。食事に行くのが駄
目ならばと、イルカの家で食事をしていたのだが、やっぱり二人で出歩きたい。しかし今までの経験からして
映画などすげなく断られるだろう。何故なら入場料が高いからだ。だからこうして映画のチケットを買ったの
だった。
イルカのことが段々分かってきていたカカシだった。
「そうですね…」
「ね、行きましょう。たまにはいいでしょ?それに行かないと、このチケット
勿体無いじゃないですか」
そのカカシのとどめの一言に、イルカの耳がビクンと反応した。かなり効いたようで、
イルカは首を縦に振ったのだった。
■ ■ ■ ■
約束の日、二人は映画館の前で待ち合わせた。カカシはるんるんで、スキップでもしそうな
勢いで、寝坊もせずに何と待ち合わせ時間より3分も早く着いたのだった。
几帳面なイルカのことだから、もしかしたらもう着いてるかもしれない、そう思ってカカシは辺りを見渡
した。すると、道の端にイルカの姿が見え、カカシは手を上げてイルカの名前を呼ぼうとして、止まった。
よく見ると、イルカは誰か知らない男と一緒だった。ぐわわっと嫉妬の炎が燃え、勢い良くイルカの元へと
近づくと、両手に何か白いものを一杯抱えたイルカが笑顔で振り向いた。
「あ、カカシ先生!」
「…イルカ先生…それは…」
「ああ、これですか?ティッシュです!さっきの人から
も、たくさん頂きました!いや〜ここはいい
とこですね!紙袋持ってきたら良かったです!」
「……」
家まで迎えに行けば良かった、そう後悔したカカシだった。
呆然としていると、イルカがそのカカシを横切り、どこかに行こうとするのが見えて、正気づき慌てて呼
び止める。
「い、イルカ先生?どこに行くんですか!?」
「ああ、あそこでも配ってるんで貰いに…」
「行かんでいい!それ以上どうするっていうんですか!」
「だってタダですよ!?」
ともすれば気が抜けてしまいそうな自身を叱咤し、カカシはイルカの腕をひいて来た道を引
き返した。何個かがイルカの腕から零れ落ちたが、そんなものどうでもいい。
始めはぶつぶつ言っていたイルカも、「俺が買ってあげますから」というと途端に機嫌が良くなった。途中
のスーパーで買い物をして家につき、一息ついた後に思い出したかのようにイルカが言った。
「あれ、そういえばカカシ先生映画は?」
「…もういいです。もう二度と行きません」
イルカのことを分かってきたつもりで、分かってなかったのかもしれない。
二度と、イルカを外へ連れ出すことはすまい、と心に決めたカカシだった。
終
(up日不明)