ホワイトデー編
カカシはイルカからチョコを貰った。
内容はともかく、れっきとしたバレンタインチョコだ。…本人の意思もともかく。
とにかく貰ったのだから、お返ししなければいけない。そしてそのホワイトデーは、明日だ。
カカシはウキウキしていた。だってイルカから貰ったチョコの、お返しなのだ。まるで恋人同士だ。
しかし、お返しなど今までした事が無い。どんな物がいいのだろう。
自分で考えてみたがさっぱり分からず、しょうがないとばかりにカカシは誰かに聞くことにした。
「…はぁ?ホワイトデーに何あげたらいいかって?」
カカシは上忍控え室に居た、紅に聞いた。
「そ。お前も一応女なんだから、分かるだろ」
「…殺されたいようね。大体イルカ先生は男でしょう」
「あっれーどうしてイルカ先生って分かったの!?」
「分かるわよそんなアホ面してんだから。でも何、イルカ先生アンタにチョコあげたの?」
「んっふっふっvまあねーvv」
カカシはデレデレとやに下がった顔をした。紅は気色悪いと視線を逸らした。
「何がいいっていうけど、アンタしょっちゅう貢いでんじゃない」
「そういうのとは違うの!これは恋人の儀式なの!」
「…はいはい。まぁそれなら、本人に何が欲しいか聞いたら?」
「えっ…!?」
「それが一番いいんじゃないの?一番イルカ先生が喜んでくれるわよ」
「…そっか!サンキュ、紅」
カカシは善は急げとばかりに、控え室を飛び出した。
「…それってホワイトデーのお返しって言わねぇんじゃねーの?クリスマスか誕生日のノリだぜ」
長椅子に腰掛けて、二人のやりとりを傍観していたアスマが、カカシが出て行った方向を見ながら口を開い
た。
「いいのよ何でも。面倒臭いったら」
あ、そ、と一人ごちて、アスマは咥えていた煙草の煙を吐いた。
「しかしやるじゃねーか。こりゃひょっとしたらひょっとするかもな、あの二人」
「…ふん。そんな甘くないわよ」
「おいおい、人の幸せをやっかむなよ」
「五月蝿いわねアスマ。アンタこそ、お返し用意してんの?」
「俺はお前に貰ってねぇぞ」
「…誰がアンタになんか。私じゃなくって、何か貰ってたじゃないの。かわいいラッピングしてさ。あれ」
アスマは最初、何のことか分からず考えた。そうして思い至る。そういえば、いのがくれたっけ。どうし
てそんなこと知ってんだと思いつつ、ああ、あれかと声に出した。
「あーそういやまだ買ってねぇな。おい、何がいいと思う?」
ドカッと突然物凄い音がした。紅が壁を殴って、穴が開いたのだった。パラパラ、と小さな葛が落ちるのを、
煙草をポロリと落としそうになりながら、アスマが呆然と見つめた。
「るっさいわね!私に聞くな!んなこと知るか!!星でも買ってあげたら!?」
紅は鬼のような形相をして怒鳴り立て、ドカドカと大股で控え室を出た。バタン!と大きくなるドアを見なが
ら、何だぁ?とアスマは訳が分からず唸った。
■ ■ ■ ■
「こんばんは、イルカ先
生」
「こんばんは、カカシ先生。どうぞ」
いつものようにイルカの家に通されて、カカシは毎度の手土産を渡した。今日は鯛の刺身とタラコと日本酒だ
った。イルカはとても嬉しそうに笑い、いつもありがとうございますと言った。カカシはその笑顔にデレッとし
た。やっぱり大好きだ。
そして今日の食卓には、その持ってきた刺身とタラコが並んだ。酒のあてにと思っていたのだが、それだと
真夜中まで居座ることになる。そうしたいのだが自分から言い出せず、こういう手段に出たのだがイルカには
通じなかったみたいだった。ちょっといやかなり内心ガッカリしながらも、おいしいですね、と言って食べ
た。いつになったら酒を酌み交わせる仲になれるのだろう。
いや、自分はイルカにチョコを貰ったのだ。そしてこれからお返しするのだ。そう思えば、まるで恋人同士
のようなことをするのだから、そう遠くない未来だ、と希望が持てた。
カカシはゴクリと唾を飲み、今日の本題に入った。
「…ところでイルカ先生、今欲しい物ってありますか?」
言った後で、しくったと思った。何て単刀直入な聞き方だ。これでは何のことかバレるのではないだろうか。
そう内心冷や冷やしていたカカシだったが、イルカは意に介した風も無く、あっさり答えた。
「お金です」
カカシは思わず、持っていた箸を落としかけた。聞けばなるほどイルカらしい、といえばそうなのだが、聞くまで想像出来なかった答えだった。
「…えーと…その次に欲しいものは…?」
まさか現金をプレゼントするわけにはいかない。
「次ですか…?そうですね、
商品券ですね」
「……ちなみにその次は?」
「んー、
土地ですね。今アカデミーの近くの土地が、値上がりそうで狙い目なんですよ!」
「…へー…そう…ですか…」
「へへ、ちょっと
ありきたりでしたかね?」
「いいえ…凄いと思いますよ。
俺、考え付きませんでしたから」
ははは、と乾いた笑いが響いた。イルカはにこにこ変わらずに笑いながら、そうですか?と少し照れたように言った。
■おまけ■
翌日カカシはイルカに、サクラに聞いて買ったクッキーを渡し、その日の晩御飯はクッキーご飯(栗ご飯とか
けたらしい)だった。水分を程よく含んで、べちゃべちゃのどろどろだった。
終
(up日不明)