世界が終わる サンプル
世界が終わる
※冒頭部分です。
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イルカ先生―――アナタに極上の真実を。そうすれば、きっとアナタは狂いだす。
飛び起きると、すぐ傍でカーテンがはためいていた。
「………」
まだ窓の外は薄暗い。
うみのイルカは呆然としながらも、荒い息を吐いて整え、ゆっくりと記憶を呼び起こそうとする。だけど憶えていない。何も。何故、自分がここに居るのかも。
「―――イルカ先生?」
突然他者の声が響いて、イルカはドキリと心臓を跳ねさせた。
だが、硬くなった身体をすぐに弛緩させる。
よく耳に馴染んだ声だからだ。
「カカシさん」
イルカの隣には、恋人であるはたけカカシが寝そべっていた。
カカシもイルカと同じように、上半身を起こす。
「どうしたんですか?」
イルカは段々と、そういえば自分はここで、カカシの家で寝ていたのだ、と思い出した。
「いいえなんでも……、すみません、起こしちゃって」
「ひどい汗。顔色も悪いよ」
カカシの目は、すぐに夜に馴染むようで、こんなにまだ暗い中で更には起き抜けなのにそう見抜いた。そっと額に滲む汗を手で拭う。
今更隠す必要もなく、既にカカシにはこのことを知られているのに、ハッキリそう言えなかったのは心配を掛けたくなかったのと、嫌がられたくなかったからだ。
「夢見が悪かったみたいです」
「また?」
「……はい」
これで何度目だろうか。
毎夜ではないが、よく悪い夢を見るようだ。
何度も悪夢にうなされる自分を疎ましく思わないだろうか、イルカはそれが気になった。
だが、カカシは優しい手つきでイルカの頬を撫でた。
「どんな夢か、やっぱり憶えてない?」
「はい」
悪夢の内容は憶えてない。こうして飛び起きることもあれば、酷く陰鬱な目覚めだけで終わることもある。毎夜でないにしろ、いい加減嫌になる。
それでもまだ、カカシがこうして一緒に寝てくれるからマシだ。カカシと一緒に寝る前は、眠ることさえ恐ろしかった。
カカシはイルカを優しく抱き寄せると、そのままゆっくりと身体を横たえさせた。
「……まだ早いですよ。寝直しましょう」
間近に顔を寄せ、髪を指ですかれて、イルカは段々と気分が落ち着いてくる。瞼をそっと下ろした。
また夢を見るのかと思うと恐ろしいが、カカシがこうして傍に居てくれるなら、不思議とまた眠ることができた。
「今度は良い夢を。イルカ先生」
トン、とこめかみを指で軽く押されると、イルカはふっと糸が切れたかのように意識を手放した。