猫の気持ち、君の気持ち
10.聞きたい気持ち
はたけカカシという上忍像は、懐石料理を食べ、夜の街を好み、毎夜違う女をはべらせているだとか、周囲ではそんなすごい想像されてるらしい。
何を根拠にそんな妄想できるんだろうか。耳に入れた時はさすがに驚いたけど、否定して回るのもなんなので放置していた。そのうち飽きるだろうと思って―――で、現在もそういう妄想が回ってるらしいけど、どうでもいいのでやっぱり放置していた。
いつも通り任務こなして家に帰ってなんか適当に食べて、で、ベッドに寝転んで。この最後の寝転んだ時が、オレにとっての至福の時だ。
実際のオレといえば、ほとんどこの繰り返しをしている。
最近変わったことといえば、オレの隣には黒猫がいるということ。
最初は戸惑いがちにオレの隣に寝そべってたけど、今では腹を見せて眠るぐらいだ。
緊張感の無い姿がなんかやけに嬉しいって、これって何でだろうね? ……と、こんなくだらないことさえ、オレには質問できる相手がいなかったりする。
他にもたくさん、聞きたいことがあるというのにオレにはそういうこと話せる相手っていなかった。
別にそれで困ったことが今まで無かったわけなんだけど、だからそういうこと意識したこと無かったんだけど。ちょっとこのごろ、オレは悩むことができたわけですよ。それでぶっちゃけ、困ってもいるわけですよ。
隣に寝そべる猫をじっと見つめたら、忍猫はオレの視線に気付いてオレを見返してきた。くりんとした目がかわいい。
「お前さ、変化とかできる?」
忍猫に聞いてみた。
忍猫ってぐらいだから、変化だってできるかもしれないと思ったわけだ。
ちょっと唐突だったかもしれない。忍猫は驚いた顔した。なんかかわいいなぁ、その顔。
「変化、ですか?」
「うん」
「……で、できます」
「へえ」
それはすごい。
いや忍猫なんだから、できたっておかしくないけど。でもこいつ、ちょっとへっぽこだから、変化できるなんてすごいと思ったっておかしくないだろう。変化できるんだ、そうかそうか。
「やってみせて」
忍猫は困った顔になった。それも結構かわいいなぁ。
「う、うまく……できるかわかりませんが」
「別にいいよ」
「えい!」
忍猫は小さい手で印をきった。するとボワンと煙がわいて、そして忍猫は―――
「………」
「……あの、カカシさん?」
小首を傾げてこちらを窺ってくる仕草に、オレは頭痛がしたような錯覚がして、頭を抱えたくなった。
「なんでその姿?」
忍猫はイルカ先生に変化していた。
オレはそんなこと、これっぽっちも望んでなんかなかった。本当だ。本心だ。
だけど、なんかその姿されるとこう……駄目だ。
ああ。
オレってイルカ先生好きなんだな。
なんてそんな馬鹿みたいなこと思ってしまった。
いっつもオレに嫌な顔しかしないイルカ先生が、すごくかわいい顔してオレのすぐ傍にいるんだもん。なんかたまんない。
「……………イルカせんせい」
頬に触れてみても、イルカ先生は少しも嫌がらなかった。
心拍数が上昇している。
イルカ先生。
イルカ先生。
その名がオレの頭の中をぐるぐる回る。
オレの悩みの種であり、オレの頭の中をこうやって、しょっちゅう占領している存在が、少し腕を伸ばすだけで抱きしめられる距離にいた。