猫の気持ち、君の気持ち
11.笑える気持ち
「…………ハイ、離れて離れて」
「カカシさん」
「ストップ、動かないで」
つくづく忍者ってもんは自制心が大事なんだと思う。
オレは忍者だったので、その自制心をもって、この忍猫の誘惑に勝つことができたといえよう。それにしても、なんてやつだ。オレが忍者じゃなかったらと考えると、少しゾッとする。
忍猫が悲しそうな顔をするので、っていうかイルカ先生の顔でそんな顔しないでくれ本当に勘弁してくれ、くらくらしそうになるじゃないか。忍者の自制心、自制心だ落ち着けオレ。上忍がへっぽこ忍猫にたぶらかされてどうする。
そういうどうでもいい思考を織り交ぜでもしないとやってられない。ただでさえオレは心が弱ってるんだから。
忍猫はベッドの上、オレはそのベッドから離れて壁ギリギリにところに立った。
「……どうして、ですか?」
オレが急に離れた理由が判らないらしい。天然って怖い。いやこれ、天然に分類すべきなんだろうか。
「どうしてって、あのねぇ」
だけど理由を言うのは嫌だった。なのでそこで言うのを止めた。
「………とりあえず、元の姿に戻ってくれる?」
溜息混じりに告げると、忍猫は元の猫の姿に戻った。オレは今度はホッと息をついた。
ホッと息をついたオレと、そしてベッドの上の忍猫。少しの間見比べてみて、そしたら妙に笑えてきた。
くっくと喉の奥で笑いながら、オレは再びベッドに寝そべった。そんなオレを覗きこむ忍猫を、オレは撫でた。もうなんともない。なんともないんだ。当然だ。
なのに、中身がこの忍猫だとわかっていながらオレは―――
まったく。なにが忍者の自制心だ。
イルカ先生に変化されただけで、あんなに心を乱されて。
オレはこんなに―――こんなにも、イルカ先生のことが好きなのか。
笑える話だ。
フラれて、冷たくされて、あんな目で見られて、それなのにだ。十年ちょっと前のオレからは想像もつかない姿じゃないか。
いや、十年ちょっと前どころか、ほんの少し前のオレからしても、なんてザマだろうか。どこにも好きで居続けるような要素なんて、これっぽっちも無いはずなのに。すぐに忘れてしまえばいいものを。
自分をカッコ悪いと思う部分が確かにある。
だけど、しょうがないと思う部分が大半だった。
そうか。これが好きってことなのか。
なんてカッコ悪くて、惨めで、みっともないものなんだろう。
けれどもしょうがない。
それでも好きなんだ。
今だってほら。簡単に彼の姿が浮かんでくるんだから。
目を閉じて、彼の名を呼んでみる。
「……イルカ先生」
呼んでみて、思わず噴き出した。
そんなオレを怪訝そうに見つめる忍猫の顔もおかしくって、手を伸ばして抱きしめた。驚いた様子の忍猫は、それでも大人しくオレの腕の中に収まっていた。
ああ笑える。ああカッコ悪い、ホントもう。
―――どうしようもない。
オレは忍猫を抱きしめたまま、ベッドの上を転がった。